2020年03月09日

「火定」澤田瞳子

火定 - 澤田 瞳子
火定 - 澤田 瞳子

新型コロナウィルス騒ぎで、
ちまたではカミュの「ペスト」に人気が出ているが、
かつて天平時代に日本でおこったパンデミック天然痘を忘れてはいけない。

直木賞候補となった澤田瞳子の「火定」は天平の天然痘流行を描いた傑作。

天平の天然痘流行では日本の総人口の25〜35パーセントにあたる
100万〜150万人が感染で死亡したとされている。
この物語の登場人物は従来の政権中枢にいた藤原四兄弟などではない。
施薬院で働く医師や役人だ。

当時、痘瘡(もがさ)と呼ばれていた天然痘は高熱が出て、
いったん落ち着く。
しかしそれから全身に膿疱が出て、再び高熱を出し、
内臓にも広がり重篤な呼吸不全によって死に至る。
飛沫感染や接触感染により感染し、7 〜16日の潜伏期間があるというところ、
肺炎で亡くなるという点は新型コロナウィルスと類似点がある。

若き官人蜂田名代(なしろ)は施薬院の仕事に嫌気が差していた。
しかし痘瘡が発生し、
なんとか患者を救おうとする医師、綱手(つなで)や周囲の人々と接するなかで、変わっていく。

作者は名代にしろ、綱手にしろ完璧な人間として描かない。
けれど、身に降り掛かった出来事の中で懸命に生きていくうちに、
自らの弱さや欠点に気付き、その先を切り開いていく。
人はみな弱い。妬み、保身、差別、そんなものにとらわれる。
物語の最後に書かれた言葉が胸に染みる。

「医に携わる者は決して、心強き者である必要はない。
むしろ悩み多く、他を恨み、世を嫉む人間であればこそ、
彼らはこの苦しみ多き世を自らの医術で切り開かんとするのではないか」。

この本を読むことは令和のパンデミックに天平のパンデミックを振り返り、
人間という存在を考えるいい機会かもしれない。

今、医療の現場で奮闘している医療関係者に敬意を表したい。
posted by 理乃(ニックネーム) at 12:58| 福岡 ☀| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月05日

応天の門12」灰原薬

応天の門 12 (BUNCH COMICS) - 灰原 薬
応天の門 12 (BUNCH COMICS) - 灰原 薬

やっと12巻が出た。
この巻では税の取り立てに苦しむ民衆が出てくる。
ほんのわずかの富める者と、食べるものにも事欠くほとんどの貧者。
そうしてできた隠れ里が舞台となっている。
人類は1000年ときを重ねても、
そうした貧富の差を解消できない。
ラベル:灰原薬 応天の門
posted by 理乃(ニックネーム) at 11:56| 福岡 ☔| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月03日

太宰府病院

1946年(昭和21年)1月21日、
杉田久女は福岡県立筑紫保養院で亡くなりました。
享年56歳。
最後を過ごした福岡県立筑紫保養院(現福岡県立精神医療センター太宰府病院)とは
どんなところだったのだろうと、
見に行ってきました。

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少し高台にあり、静かな場所で、
敷地内で誰かがギターを奏でていました。

「花衣 ぬぐやまつはる 紐いろいろ」久女
posted by 理乃(ニックネーム) at 17:59| 福岡 ☁| Comment(0) | ●五条 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月02日

「菊枕」松本清張

張込み―松本清張短編全集〈03〉 (光文社文庫) - 松本 清張
張込み―松本清張短編全集〈03〉 (光文社文庫) - 松本 清張

「断碑」を読むために買った松本清張短編全集03。
その中に「菊枕」という小説があった。
この物語もルサンチマンに囚われた人物が主人公だが、
思いがけず太宰府と関連があった。

主人公ぬいのモデルは杉田久女(すぎたひさじょ)。
高浜虚子に師事した近代俳句創成期の俳人。
美術家として期待して結婚した夫が
田舎の美術教師におさまり不満を募らせ、
俳句を始め頭角を現す。
その執拗な性格で虚子との確執が生まれ、
疎んじられるうちに精神に障害をきたして亡くなるというストーリー。

ぬいは嫌な性格の女として描かれたため、
遺族からは真実を歪曲していると訴えられたらしい。

句誌の選者、瀬川楓声が来福したおり、
ぬいは吟行に同行して太宰府、観世音寺、都府楼跡にやってくる。

小説の最後、ぬいはある精神病院で亡くなるが、
現実の久女は県立筑紫保養院で亡くなる。
それは五条にある福岡県立精神医療センターなのだ。
posted by 理乃(ニックネーム) at 12:14| 福岡 ☀| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月01日

竈門神社の緋桜

「烟たつ かまどの山の 緋桜は 
香飯(きょうはん)の国の 贈る春風」仙

けむりが立つように匂う竈門の山の緋桜は
天上の世界から贈られてくる春風のよう。

と仙高ウんが歌った竈門神社の緋桜が咲いています。

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ラベル:緋桜 竈門神社
posted by 理乃(ニックネーム) at 18:36| 福岡 ☁| Comment(0) | ●竈門神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

金剛兵衛井戸

金剛兵衛は鎌倉時代から室町時代にかけて宝満山の麓で活躍していた刀鍛冶の一派。
山伏の刀の鍛冶師だったらしいです。

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これは金剛兵衛が使っていたと伝えられる井戸です。
かたわらには地蔵菩薩像がありました。

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これまでいろんな太宰府の文化遺産を探してきたけど、
これは超難関、根性で見つけました(笑)
posted by 理乃(ニックネーム) at 18:34| 福岡 ☁| Comment(0) | ●竈門神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月29日

「鬼滅の刃」の聖地、竈門神社

今や「鬼滅の刃」の聖地となった竈門神社へ、
その人気ぶりを確かめてきました。

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その目印は絵馬。
なるほど、絵馬掛所には鬼滅のキャラが書かれた絵馬がいっぱい。

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それも微笑ましいものばかり。

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そしてその前で写真を撮るファンの男の子たち。
これはやっぱり、以前の竈門神社ではありえなかった光景。
コロナウィルスで大騒ぎだけど、
夕暮れの雨模様の竈門神社は静かで、
早春の息吹も爽やかで、新鮮な空気に満ちてました。

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posted by 理乃(ニックネーム) at 11:40| 福岡 ☔| Comment(0) | ●竈門神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月27日

「断碑(だんぴ)」松本清張

松本清張の「断碑」の主人公、
木村卓治のモデルは森本六爾(ろくじ)。
考古学への愛がありながら、不遇の中で32年の生涯を閉じた人。
清張の描く木村卓治は思うように進学できず、
周囲と摩擦を起こす性格のゆえ、
学界へのルサンチマンに身をたぎらす。
卓治と知り合い、結婚した浅川シズエのモデルは
小山貞輔(モデルは中島利一郎)の姪ミツギ。
中島利一郎は太宰府市国分の生まれ。
水城小学校から修猷館、早稲田へ進み、黒田家記録編纂主任となり、
その後宮内省臨時帝室編集局に入り、
「明治天皇紀」の編集に従事した。
国分寺の「聖武帝勅建筑前国分寺碑」の背面の碑文を記している。
自宅の「琳琅書屋(りんろうしょおく)」には松本清張も出入りしていた。
姪の浅川ミツギさんは下大利の出身。
福岡高等女学校から東京女子高等師範学校へ進んだ才媛だったそう。
朝倉高等女学校に勤めたのち、
叔父の中島利一郎を頼って上京し、
東京女学館で物理・化学を教えた。
教師をして家計を支え、森本の仕事の手伝いもし、
子育てもしと、苦労を重ね結核にかかり、森本より一足先に31歳で亡くなった。

*桜井市立図書館HP参照

張込み―松本清張短編全集〈03〉 (光文社文庫) - 松本 清張
張込み―松本清張短編全集〈03〉 (光文社文庫) - 松本 清張

*「断碑」は「松本清張短編全集〈03〉」に収録されている。
posted by 理乃(ニックネーム) at 17:59| 福岡 ☁| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月24日

鬼滅の刃

「鬼滅の刃」TVアニメ版(1話〜26話)、アマゾンプライムですべて見終わった。
面白かった!
メッカとなった竈門神社は多くの人が押し寄せているそう。
大宰府の鬼門、主人公の名前などのキーワードでメッカになっているが、
鬼殺隊の武器、刀も竈門神社は大いに関係あり。
わたし個人としては竈門家に代々伝わるヒノカミ神楽も気になるところ。
物語が始まる前に亡くなっている炭治郎の父、 炭十郎がヒノカミ神楽を舞うシーンは美しい。
宿敵、鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)が根城とした家の描写など、作画にもひかれる。
独創的なネーミングとキャラクターデザイン、ファンがメッカに押し寄せる心理も理解できる。
さて、アニメ版で炭治郎が乗り込んだ無限列車。
そのストーリーは「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」で見られるので楽しみだ。
坂本八幡宮でもまさか、竈門神社でもまさかが続いている太宰府より。
posted by 理乃(ニックネーム) at 16:02| 福岡 | Comment(0) | ●竈門神社 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「美貌の女帝」永井路子

新装版 美貌の女帝 (文春文庫) - 永井 路子
新装版 美貌の女帝 (文春文庫) - 永井 路子

今も皇位継承で女系天皇を認めるかの問題があるが、
古代には女性天皇はいた。
草壁皇子の正妃だった元明天皇。
そして元明天皇の後を継いだ本書の主人公、元正天皇。
父は天武天皇と持統天皇の子の草壁皇子、母は元明天皇。
それまでの女帝が皇后や皇太子妃であったのに対して、
美貌でありながら独身を通した女性天皇だった。
出生の蘇我氏の宮廷における力を守るために闘った生涯。
永井路子は元正天皇の生涯を女性の視点から描く。
政治の陰謀渦巻く時代に、女帝の力を見直し、再評価する。
元正天皇は単なる中継ぎではなかったということが描かれる。
元正天皇サイドの人物として旅人も家持も登場。
天平の太宰府の理解を深める一冊。
posted by 理乃(ニックネーム) at 11:26| 福岡 | Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする