2017年02月02日

「九州太宰府殺人事件」 木谷恭介著

K氏が今読んでいると教えてくれた「九州太宰府殺人事件」。
テレビドラマ化されるなどミステリー作家として売れっ子だった木谷(こたに)恭介。
旅情ものをいくつも書いている中で今回、太宰府だったのに興味を覚え読んでみた。
警察庁長官直属で、管轄区域や警察組織の壁を越えた捜査権限を持つ警察庁特別広域捜査官、
宮之原昌幸警部が殺人事件を解決するシリーズものの一作だ。
といってもこの作品は経済小説のようでもある。
銀座のバー「キリコ」を訪れた2日後に月丘建設の元常務、
宝生和浩が秋月で残忍な死体となって発見される。
胸には梅の枝が置かれ、コートと上着の間に短冊が挟まっていた。
そこには旅人の
「わが苑に梅の花散るひさかたの 天より雪の流れ来るかも」
という歌が書かれていた。
月丘建設は2ヶ月ほど前に倒産していた。
キリコに勤める冬子は宮之原警部と事件解明のため動く。
そして月丘建設が倒産に至った経緯が少しずつ解き明かされていく。
倒産の前に月丘建設の株を売ったのは柳明笵。
そのバックには元建設大臣の粟津がいた。
なぜ宝生は秋月で死んだのか。
福岡県は粟津の選挙区であり、太宰府に家があった。
さらに背後に政官財界を牛耳ったフィクサー、鬼島がいた。
その愛人鳥海弥生が政官財界の大物が集うサロン「ロプノール」のママであり、
出身地が秋月だった。
宝生が秋月へ行く前、立ち寄ったということで太宰府が登場する。
冬子と宮之原警部は都府楼前駅にやって来て、
展示館、観世音寺、五条、天満宮を訪れる。
作中描写される古代の大宰府については的確だ。
ここで宮ノ原警部は面白い説を語る。
「白村江の戦いで百済が滅び貴族のほとんどが日本に移住した…。
大和政権は百済そのものなんじゃないか」と。
柳明笵は株を売った大金の小切手をヘッジファンドに送金した。
ここで作家はヘッジファンドというマネーゲームを批判する。
「今の不況はバブルの後始末が上手く行かないから。
銀行が国や大蔵省を頼りにして自分で後始末をつけないから。
同時に金融行政を取り仕切っていた大蔵省の責任でもある。
その後のビックバンでアメリカは1200兆円と言われている
日本人の個人資産を剥ぎ取ろうとしている」と。
そして巨額の金はヘッジファンドに送られたのだ。
最後で宝生と旅人の関係が語られる。
宝生は大宰府へ左遷された旅人に自分をなぞらえたのではないかと。
「歴史は陰謀と裏切りの連続。時代が変わってもそれは変わらない」
しかし、梅は永遠に咲き続けている小説は結ばれている。
確かに。人の世は醜い。
けれど梅は今年も高貴な香りを漂わせれいる。

九州太宰府殺人事件 (ハルキ文庫) -
九州太宰府殺人事件 (ハルキ文庫) -
posted by 理乃(ニックネーム) at 23:02| 福岡 ☀| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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