2017年07月18日

麗しまほろば

●麗しまほろば

那の津から南下すると
両側から突き出た山の隙間を塞ぐように
水で守られた高く長い堤の水城がある
その門をくぐり
古い都 大宰府へ入ろう

左に天を衝くような国分寺の七重塔
背後の霧が棚引く屏風のような大野山には
中大兄皇子が水城に続いて築かせた大野城がある
馬蹄形の山頂に沿って土塁が築かれ
七十棟もの建物が建てられた
水城と大野城が築かれたのは
白村江の闘いに負けた倭の国を守るため
戦に駆り出された兵士たちの多くは戻ってこなかった

大野城から見下ろせば都府楼があり
龍が深く息を吸って地に潜り 出てきたところに
朱塗りの柱が立ち並ぶ正殿が建てられた

その先にあるのは吉備真備が造った学校院
明教・医術・算術を学んでいたのは
二百人もの若者たち
瀟洒な建物の壁面を優美な花模様の煉瓦が飾る

隣の観世音寺は西海道一の大伽藍
落成供養の導師は玄宗皇帝にも重んじられた僧玄ム
巨大な心礎の上に五重塔が聳え
日本で一番古い梵鐘の音色が厳かに鳴り響く

このまほろばで
旅人も憶良も
愛する人を亡くした哀しみや 貧しい人々への哀れみや
凛として香り高い梅の花を詠った
やがては道真が幼い紅姫と隈麿と暮らし
痛切な思いを詩に刻んだ

大野城の城門も都府楼の正殿も失われても
緑の樹々で覆われた道を辿れば
霧の中に甦る
大宰府は 麗しまほろば

※2016年度版 福岡県詩集掲載


posted by 理乃(ニックネーム) at 22:23| 福岡 ☔| Comment(0) | NEWS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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