
天翔る白日―小説 大津皇子 - 黒岩 重吾
古代史を彩る皇子たちの中でも
大津皇子(おおつのみこ)はひときわ気になる存在です。
大津皇子は天武天皇の皇子に生まれながら
非業の死を遂げます。
白村江の戦いのため祖母が一族を率いて赴いた那大津で生まれたゆえに大津皇子。
母は天智天皇皇女の大田皇女。
同母姉が大伯皇女。妃は天智天皇皇女の山辺皇女。
『懐風藻』に、「状貌魁梧、器宇峻遠、幼年にして学を好み、
博覧にしてよく文を属す。壮なるにおよびて武を愛し、
多力にしてよく剣を撃つ。
性すこぶる放蕩にして、法度に拘わらず、
節を降して士を礼す。これによりて人多く付託す」とあります。
文武に優れ、人望がある実に魅力的な人物です。
母の大田皇女は鵜野讃良皇后(後の持統天皇)の姉。
元気であれば皇后のはずでしたが、
大津が4歳頃の時に薨去。
姉の大伯皇女は斎女とされました。
母が生きていれば運命は変わっていたと思いますが、
皇太子に選ばれたのは異母兄の草壁皇子。
鵜野讃良皇后と草壁にとって邪魔となった大津は
次第に追い詰められ、首をくくられることになるのです。
これはその間の事情を克明に描いた小説。
最終部分は哀れで涙を誘います。
大津皇子、大伯皇女、山辺皇女や愛した女性の歌が、
当時の人々の心情を今に伝えます。
*ウィキペディア参照