2020年09月01日

「万葉 花・風土・心」犬養孝著

万葉―花・風土・心 (現代教養文庫) - 犬養 孝
万葉―花・風土・心 (現代教養文庫) - 犬養 孝

やっとこの本を入手。
この中にわたしの愛してやまない万葉の小径について
書かれている箇所があるからです。

「ここからの落葉の道が好きだ。
周辺が開発されているのに、
ここばかりは何年たっても変らない。
市街からまったく忘れられたようにして残っている道だ。
杉木立や雑木林の中にはいってゆくと、
落葉が踏むたびに音立てる。
こんなにすばらしい道、こんなに古代のおもかげを事こまかに宿した道がまたとあるだろうか。
わたくしは、これこそ旅人・憶良が行き交うた
古代の道といってもおかしくないように思われる。」
ラベル:犬養孝 万葉
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2020年08月21日

「天翔(あまかけ)る白日 小説大津皇子」@黒岩重吾

天翔る白日―小説 大津皇子 - 黒岩 重吾
天翔る白日―小説 大津皇子 - 黒岩 重吾

古代史を彩る皇子たちの中でも
大津皇子(おおつのみこ)はひときわ気になる存在です。

大津皇子は天武天皇の皇子に生まれながら
非業の死を遂げます。
白村江の戦いのため祖母が一族を率いて赴いた那大津で生まれたゆえに大津皇子。
母は天智天皇皇女の大田皇女。
同母姉が大伯皇女。妃は天智天皇皇女の山辺皇女。

『懐風藻』に、「状貌魁梧、器宇峻遠、幼年にして学を好み、
博覧にしてよく文を属す。壮なるにおよびて武を愛し、
多力にしてよく剣を撃つ。
性すこぶる放蕩にして、法度に拘わらず、
節を降して士を礼す。これによりて人多く付託す」とあります。

文武に優れ、人望がある実に魅力的な人物です。
母の大田皇女は鵜野讃良皇后(後の持統天皇)の姉。
元気であれば皇后のはずでしたが、
大津が4歳頃の時に薨去。
姉の大伯皇女は斎女とされました。
母が生きていれば運命は変わっていたと思いますが、
皇太子に選ばれたのは異母兄の草壁皇子。
鵜野讃良皇后と草壁にとって邪魔となった大津は
次第に追い詰められ、首をくくられることになるのです。

これはその間の事情を克明に描いた小説。
最終部分は哀れで涙を誘います。

大津皇子、大伯皇女、山辺皇女や愛した女性の歌が、
当時の人々の心情を今に伝えます。

*ウィキペディア参照
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2020年08月20日

天智と天武〜新説・日本書紀D@原案監修:岡村昌弘 漫画:中村真理子

天智と天武 ―新説・日本書紀―(5) (ビッグコミックス) - 園村昌弘, 中村真理子
天智と天武 ―新説・日本書紀―(5) (ビッグコミックス) - 園村昌弘, 中村真理子


斉明天皇、朝倉橘広庭宮で崩御。
それは朝鮮出兵に気乗りしない斉明天皇に苛立った
中大兄皇子が自ら手にかけたものでした。
大友皇子は中大兄皇子と瓜二つに育っていきます。
朝鮮を我のものにしようとする中大兄皇子は出兵の準備を進めます。
Eはいよいよ白村江の戦い。
どう描かれているのか楽しみです。
中村真理子氏は建物の描写も素晴らしく、
次々に現れる歴史の中の建造物が見られるもの楽しみです。
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蘇我の娘の古事記@周防柳

蘇我の娘の古事記 (時代小説文庫) - 周防柳
蘇我の娘の古事記 (時代小説文庫) - 周防柳

これは面白かったです。
蘇我入鹿が討たれた乙巳の変後の時代。
国史編纂に力を注ぐ父のもとで育つ仲の良い兄妹、ヤマドリとコダマが主人公。
盲目の妹コダマはおそるべき記憶力の持ち主で、
語り部が語る物語を一度で記憶します。
けれど日本の黎明に揺れる政争が二人を巻き込んでいきます。
兄妹でありながら、強く惹かれる二人。
実はコダマには秘密がありました。
飛鳥時代を背景にしたヤマドリとコダマのラブストーリー!
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2020年08月07日

「落日の王子 蘇我入鹿」黒岩重吾

蘇我入鹿 落日の王子(上) (文春文庫 (182‐19)) - 黒岩 重吾
蘇我入鹿 落日の王子(上) (文春文庫 (182‐19)) - 黒岩 重吾

落日の王子 蘇我入鹿(下) (文春文庫) - 黒岩 重吾
落日の王子 蘇我入鹿(下) (文春文庫) - 黒岩 重吾

古代史ものの現代小説を読んでいますが、
今回は黒岩重吾の入鹿を主人公にしたもの。
前回は中大兄皇子を主人公にしたものを読みましが、
よくいろんな人物に視点を変えて書けるものだと感心します。
倭の国を支配しようとするぎらぎらした野望を持った入鹿。
夫を亡くした皇極女帝とも関係を持ちます。
がっしりとした体と太い眉に大きな目が強い意志を感じさせる入鹿。
蘇我本宗家・蘇我蝦夷の長子として、さらなる権力を持とうと画策。
それが潰えるのはご存じのとおり。
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2020年07月09日

「大宰府と万葉の歌」オンライン朗読会 vol.5

森弘子先生の「大宰府と万葉の歌」オンライン朗読会(YouTube)、
今朝は5回目でした。
p76〜p83までで、内容は防衛都市大宰府の水城(664年築城)、
大野城(665年築城)でした。
今回、大阪の狭山池(日本最古の人工池)も
百済技術者の指導で敷粗朶(しきそだ)工法(基底部に植物の葉や枝を敷きつめ、
透水性をよくして基礎の滑りを押さえる)で築造されていると知りました。
狭山池には大阪府立狭山池博物館という立派な施設があります。

写真は5月に行ったJRが水城を分断しているところにある
水城土塁断面広場(JR水城駅そば)です。

20200510_113804 - コピー.jpg

水城の発掘で現れたという築城当時の敷粗朶に使われた
葉が緑の色をとどめていたという奇跡のような写真が案内版で見られます。

20200510_113834 - コピー - コピー.jpg

20200510_113939 - コピー.jpg
断面のレプリカ

次回vol.6は7月16日9:00からです。
ラベル:水城跡
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2020年06月30日

アンゴルモア 元寇合戦記

率土の最果て - 栗山貴行, 小野友樹, Lynn, 小山力也, 乃村健次, 斎藤志郎, 堀江瞬, 竹内良太, 小林裕介, 浜田賢二, 柴田秀勝, 鈴木達央, 立花慎之介, 小野賢章
率土の最果て - 栗山貴行, 小野友樹, Lynn, 小山力也, 乃村健次, 斎藤志郎, 堀江瞬, 竹内良太, 小林裕介, 浜田賢二, 柴田秀勝, 鈴木達央, 立花慎之介, 小野賢章

アンゴルモア 元寇合戦記は
元寇(文永の役・1274年)での対馬の戦いを描いたアニメ。

元寇を初めて知ったのは子どものころ
父が連れて行ってくれた東公園にあった日蓮聖人像でした。
その台座のレリーフの絵は矢田嘯雲によるもので、
蒙古軍に捕らえられた人々が
手に穴を開けられてつながられている様子が、
あまりに恐ろしくてトラウマになりました。
蒙古軍は対馬、壱岐を通ってきたわけで、
対馬がどれだけひどい損害を被ったか、
誰がどのように戦ったのか、
想像も及びませんでした。
このアニメは史実そのものではないけれど、
その歴史に肉迫して、
面白すぎて目が離せません。

時は1274年(文永11年)秋。
主人公は流人。
元御家人・朽井迅三郎らは鎌倉幕府によって対馬に流刑されます。
対馬に辿り着いた流人たちは、
対馬地頭、宗氏の娘・輝日姫から
蒙古・高麗の大軍団が日本に向かっており、
迅三郎たちは最前線の対馬で
戦うために送られたと聞かされます。
600年も前に対馬に築かれた金田城に
防人の末裔たちがまだ城を守っているという設定には
キュンキュンしてしまいます。
刀伊祓(といばらい)と言われる彼らは宗家には服属せず、
顔に入れ墨があったり独自の習俗と戦力を持っています。
また壇ノ浦の戦いから安徳天皇は
対馬に落ち延びていたという設定にも唖然・・・。
何のために戦うのか当初は意味を見いだせなかった朽井迅三郎は
戦いの中で対馬の人々と触れ合ううちに、
対馬の民のために戦うのだと志を抱くように変化します。
多くの主要人物が戦いに散って行った最後に
輝日姫が「対馬はまだ終わっておらぬ」と言うセリフに涙が出てきます。
戦いの場は博多に向かいますが、
それはまだコミック連載中です。

追記:太宰府市民としては
幕府軍として登場する少弐資能(しょうにすけよし)にも注目!
息子の景資が対馬に援軍を送るのを妨害しますが、
資能の墓は太宰府の森にひっそりとあります!!

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2020年06月21日

「隠された十字架 法隆寺論」梅原猛

隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫) - 猛, 梅原
隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫) - 猛, 梅原

すごい本でした。
センセーショナルで情熱に溢れ、
法隆寺の謎に肉迫する書物。
漫画「天智と天武」の冒頭で法隆寺の救世観音開扉の経緯を知り、
この本を読まねばと思った次第です。
救世観世音菩薩像は、200年間もの間、
開扉されていませんでした。
開扉すると恐ろしいことが起こると洗脳されていた僧侶たちの反対を押し切って
扉を開いたのは日本人ではなく外国人でした。
それは1884年(明治17年)のこと。
明治政府から調査の委嘱を受けたアーネスト・フェノロサは
調査目的での開扉を寺に求めました。
扉を開けたところ、埃に塗れ、
500ヤード(約457メートル)の木綿の布で
ぐるぐる巻きにされた救世観音が現れました。
しかも光背は像の頭に釘打ちされていたのです!
しかしフェノロサは像の美術的な価値に言及したものの、
この像がなぜこのような姿をしているところまでは立ち入りませんでした。
誰がどんな目的で作ったのか、
この像について総合的に俯瞰して見る視線は
一人の哲学者の登場を待たねばなりませんでした。
それがこの書。
隠された物語は実に巧妙で、
その謎を解いていく過程はスリリングそのもので、強烈な読書体験でした。
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2020年06月20日

「天智と天武C〜新説・日本書紀」

天智と天武 ―新説・日本書紀―(4) (ビッグコミックス) - 園村昌弘, 中村真理子
天智と天武 ―新説・日本書紀―(4) (ビッグコミックス) - 園村昌弘, 中村真理子


白村江の戦いの戦いの前夜、
中大兄皇子は新羅と戦い百済を復興させようとします。
一方、大海人皇子は戦争回避を願います。
単身、新羅へ渡った大海人皇子は新羅の武烈王と再会し、
百済残党軍との調停役を試みるがうまくいきません。
帰国した大海人皇子は中大兄皇子の意志を覆せず、
母斉明天皇もともに、唐と新羅の連合軍と戦う準備のために
一族で筑紫へ下ってきます。
舞台は身近なところへ!
那大津(博多湾)へ入港した一行は磐瀬仮行宮に滞在したのち、
朝倉橘広庭宮へ入ります。
いよいよ準備ができつつあるとき、
斉明天皇は押し切られてきた中大兄皇子に逆らい、
兵は出さぬと言い出します。
入鹿と母を愛していた中大兄皇子は双方に屈折した感情を抱いて成長。
手に入れることのできなかった母の愛に絶望し、
恐ろしいことをしでかすのです・・・。
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2020年06月06日

「天智と天武〜新説・日本書紀〜」B

天智と天武 ―新説・日本書紀―(3) (ビッグコミックス) - 中村真理子, 園村昌弘
天智と天武 ―新説・日本書紀―(3) (ビッグコミックス) - 中村真理子, 園村昌弘


紀伊の牟婁の湯から飛鳥へ戻った有間皇子はかの地を称賛。
話を聞いた斉明天皇は一族を引き連れ牟婁の湯に行幸します。
額田王と再会した大海人皇子は
十市皇女と名付けられた娘がいることを知ります。
その間、有間皇子は謀反の意志ありと
赤兄によって陥れいれられ18歳の命を落とします。
ある晩、中大兄皇子、大海人皇子、額田王、
鏡王女、鎌足は一つところに集まり、
中大兄皇子の提案でそれぞれの心の内を明かします。
幼い頃、愛する母と入鹿が愛し合い、
自分よりも入鹿との子ども大海人皇子を慈しむ姿を見て苦悩する中大兄皇子。
父、入鹿が中大兄皇子に殺され、
隠れ里に逃れていた大海人皇子のもとに訪ねてきたのは
新羅の金春秋(のちの武烈王)。
金春秋は大海人皇子に復讐は時を待てといいます。
鎌足(豊璋)は父、百済王義慈王のことを話し始めます。
義慈王は新羅領だった伽耶を奪還するため攻め入ります。
大耶城の城主の妻は金春秋の娘。
義慈王は降伏して城の外に出てきた一家を虐殺。
金春秋は復讐に燃え、百済滅亡を画策します。
鎌足はどこか似ている入鹿と金春秋が手を携えることを恐れ、入鹿虐殺計画を練ったのです。
額田王の告白は男が何人もの女を同時に愛するように、
女もそうなのだということ。
660年、ついに百済は新羅、唐の連合軍によって滅びます。
新羅5万、唐13万の軍勢でした。
だが鬼室福信などの精鋭部隊はまだ残っていて、
豊璋を連れ戻しに来ます・・・。。
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2020年06月05日

「夢も定かに」澤田瞳子

夢も定かに (中公文庫) - 澤田 瞳子
夢も定かに (中公文庫) - 澤田 瞳子

1300年前の後宮のワーキングガールのお話。
三人の采女(地方の豪族の娘)たちが主人公。
中心の若子は膳司(かしわでのつかさ/天皇の食事を準備)勤務。
笠女(かさめ)は才女で書も達者な書司(ふみのつかさ)勤務。
愛らしい美女、春世は藤原麻呂の愛人で縫司(ぬいのつかさ)勤務。

勤務先では氏女(うじめ/畿内豪族の娘)の差別や嫌がらせにも耐えています。
頃は聖武天皇の御世。
同室の三人は謀略渦巻く宮中で、
懸命に生きて行こうとします。

皇女たちの間で事件が起こり、その解決のために奮闘もします。
そんな中で藤原房前も登場。

采女には若く美しい女性が選ばれました。
それは地方の豪族たちの朝廷に対する服従のしるし。
けれど差し出された采女たちは、
決してものではありませんでした。
与えられた運命の中で自らの生き方を模索していたのだというのがこの小説。

生き生きと後宮を立ち回っていた采女たちの物語を読んだあと、
若子にモデルがいたことを知りました。
若子は板野采女、板野命婦と呼ばれ
正倉院文書で仏典の出納や貴人の意志を伝える場面で登場。
「続日本紀」には天平17年(745)、紫香楽宮で外従五位下を授けられたと出てきます。

物語の中で若子は房前と関係を持ちます。
二人の間に生まれたのが藤原楓麻呂。
楓麻呂のことを調べると、
大宰大弐であったことが分かり、
いっそう物語が近づいた感じがしました。
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2020年06月04日

「天智と天武〜新説・日本書紀〜A」

天智と天武 ―新説・日本書紀―(2) (ビッグコミックス) - 中村真理子, 園村昌弘
天智と天武 ―新説・日本書紀―(2) (ビッグコミックス) - 中村真理子, 園村昌弘

蘇我入鹿の息子であることが知れても中大兄皇子の付き人となった大海人皇子。
豊璋(鎌足)の息子、真人(定恵)は遣唐使となって海を渡ることに。
孝徳帝を難波に置き去りにし、飛鳥へ遷都する中大兄皇子。
体調を崩し寝込んだ孝徳帝を看病する有間皇子と大海人皇子。
皇位継承者候補である有間皇子の存在を放置しておくわけにはいかない中大兄皇子。
ついに亡くなった孝徳帝の跡を継いだのは重祚した斉明天皇でした。
巻の最後には斉明天皇が大海人皇子のもとに差し向けた絶世の美女、額田王が登場。
有間皇子の運命はいかに・・・。
冷酷そのものの中大兄皇子に対し、大海人皇子は従順な下僕を装いながら父入鹿の復讐を胸に懐き続けます。
ラベル:天智と天武
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2020年05月28日

「隼人の実像」中村明蔵

隼人の実像―鹿児島人のルーツを探る― - 中村 明蔵
隼人の実像―鹿児島人のルーツを探る― - 中村 明蔵

旅人を語るとき、どうしてもはずせないのが隼人です。
当時の隼人がどんな状況にあったのか知りたくて
手にしたのがこの本。

710(和銅3)年正月、旅人は元明天皇の朝賀に際して、
左将軍として副将軍・穂積老と共に
騎兵・隼人・蝦夷らを率いて朱雀大路を行進しました。

720(養老4)年、大隅守・陽侯史(やこのふひと)麻呂を殺害した隼人の反乱では
征隼人持節大将軍に任命され、
1万の朝廷軍を率いて鎮圧にあたりました。

7世紀後半ごろ対隼人政策として
主に天武朝のころ隼人は畿内に移住させられていました。
隼人は衛門府の隼人司に属して、儀式に参加。
170人ほどの隼人が宮殿の入り口の応天門の外で、
儀場に入る官人に吠声(はいせい)を発しました。
吠声とは「オオオォォオ〜」というような
犬の鳴き声に似たもので邪気を払う力があるとされていました。
服装も決められ、白赤木綿の耳飾りをつけ、
赤い絹布の肩巾を身に着けました。
手は楯と槍を持ちました。
楯のデザインは独特で上下に三角文(鋸歯文)が描かれ、
中央にはSの字を鏡文字にしたような連続渦巻文が
上下で繋がるように三色で描かれていました。
さらに隼人舞も舞いました。
朝廷の隼人は朝廷の権力が遠い九州の果てまで及んでいることを
誇示するために演出されていたようです。
九州の隼人は都まで貢物を運び納めるだけでなく、
その後8年も労役に従事させられ、苦しんでいました。
さらに豊前、肥後から大量の民が隼人の土地に移住させられ、
土地を奪われた隼人は自由を求めて反乱を起こしたのです。

旅人は藤原不比等が亡くなったため、
半年ほどで都に戻りましたが、
隼人の抵抗は1年半に及び、
朝廷軍は捕虜と討ち取った首をあわせて1400人分を持ち帰ったといいます。

征服者側であった旅人は隼人をどんな面持ちで見つめていたのでしょうか?
旅人の歌は大宰府の帥になったあとに作られたものがほとんどで、
隼人に対する心情は分かりません。
タリシサ、シジハシ、カネホサ…、
倭の言葉とは違う響きを持つ隼人の名前。
征服されはしたものの、抵抗する人々であった隼人の埋もれた歴史が気になっています。
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2020年05月27日

「天智と天武〜新説・日本書紀〜@」】

天智と天武 ―新説・日本書紀―(1) (ビッグコミックス) - 中村真理子, 園村昌弘
天智と天武 ―新説・日本書紀―(1) (ビッグコミックス) - 中村真理子, 園村昌弘


これは面白い!
天智天皇と天武天皇の物語は小説に取り上げられることが多いのですが、
この漫画はこれまでの物語とまったく違う視点で描かれています。

物語は明治17年のある出来事から幕を開けます。
場所は法隆寺夢殿。
1200年も前から人目に触れることがなかった秘仏の扉をフェノロサが開けます。
そこにあったのはエジプトのミイラのように布でぐるぐる巻きにされた救世観音。
美しい像の光背は頭部に釘で打ち付けられていました!

そして場面は天智と天武の時代に逆行していきます。
現れたのは蘇我入鹿。
若く美しく、聡明で素直な顔立ちに、
これまでの蘇我入鹿のイメージが覆されます。
一方、天智天皇は冷酷な顔立ちに描かれています。
傍らにいる中臣鎌足はなんと百済の王子豊璋、
そして天武は蘇我入鹿と斉明天皇との子どもという設定に驚かされます。
やがて乙巳の変が起こり、入鹿は無惨にも天智に殺害されます。
数年後、登場した天武は入鹿の生き写しでした。
天智に仕えることとなる天武…。

この漫画の監修は岡村昌弘氏。
執筆において最も影響を受けたのが梅原猛の「隠された十字架」といいます。
作画の中村真理子さんの絵もすてきです。
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2020年05月26日

「道鏡」坂口安吾

道鏡 - 坂口 安吾
道鏡 - 坂口 安吾

道鏡の描かれ方はさまざまだ。
孝謙天皇に寵愛され姦通した破廉恥僧とする説や
巨根説などがまことしやかに唱えられ、
説話集でも語られた。
坂口安吾の道鏡はそれとは異なり、
道鏡を天智天皇の皇子、志貴皇子の落胤とする説を取り、
女帝に従順に仕えた大人しい僧として描かれる。
その魂は高邁で、学識は深遠で俗界の狡知に慣れないと。
「道鏡」というタイトルだが、
大化の改新からの天皇家のお家騒動を説明するような歴史の教科書的側面がある。
男性天皇であれば何人もの女性を娶るのに、
女性天皇だとそれが許されない。
道鏡と称徳天皇の愛の真実は永遠の謎。
道鏡は称徳天皇の死後、その陵下に庵をむすび、冥福を祈り、のちに下野薬師寺の別当を命じられた。
坂口安吾は薬師寺別当は流刑に当たらない。
道鏡は「たぶん、煙たがられていたにしても、
さして憎まれてはいなかったのだ」と書いている。
坂口安吾が感じた道鏡の気品。
一人の歴史上の人物を見つめる目はこれほど異なる。
ラベル:道鏡 坂口安吾
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2020年05月23日

「朱鳥の陵(あかみどりのみささぎ)」坂東眞砂子

朱鳥の陵 (集英社文庫) - 坂東 眞砂子
朱鳥の陵 (集英社文庫) - 坂東 眞砂子

★ネタバレ注意
飛鳥時代のお話。
主人公は二人。
常陸国で夢解きをしていた白妙と持統天皇。
白妙は藤原京に呼ばれ、
御名部皇女が見た夫、高市皇子の夢を解き明かすように命じられる。
その夢解きの途中で白妙はなぜか
持統天皇の心の中に迷い込んでしまう。
内裏暮らしで白妙は額田王、柿本人麻呂とも出会い、
少しずつ持統天皇の触れてはいけない秘密に近づいていく。
天智天皇の娘で、天武天皇の妻となった持統天皇。
天智天皇亡き後の後継者争い、
壬申の乱で、天武天皇は天智天皇の第一皇子、大友皇子を打ち負かす。
一時は吉野に籠もり、
苦労して助け合ってきた夫、天武天皇は次々に妻を娶り、
持統天皇の不満は募る。
やがて持統天皇は夫、天武天皇を死に至らしめ、
高市皇子の手を借り能力なしと見限った息子草壁皇子まで手にかける。
持統天皇の心の闇に分け入った白妙はついに持統天皇に悟られてしまう。
そして持統天皇は恐ろしい罰を白妙に与える。
このラストに収束していくホラー感が坂東眞砂子の真骨頂。

万葉集中の持統天皇の一首、

「春過ぎて 夏きたるらし “白妙”の 衣ほしたり 天の香具山」

もうこの歌を恐怖なくして読めそうになくなった。
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2020年04月25日

「孤鷹の天」澤田瞳子

孤鷹の天 上 (徳間文庫) - 澤田 瞳子
孤鷹の天 上 (徳間文庫) - 澤田 瞳子

孤鷹の天 下 (徳間文庫) - 澤田 瞳子
孤鷹の天 下 (徳間文庫) - 澤田 瞳子

藤原清河の家に仕える高向斐麻呂(たかむくのいまろ)は
唐に渡ったきり帰国できない清河の娘、広子のために渡唐を決意し、
大学寮に入学する。

そこには儒学の理念の下、ひたむきな教官と学生たちがいた。

あるとき奴婢の赤土(あかつち)に懇願され、
内密に学問を教えることになる。
しかし、仏教至上主義の孝謙上皇と
儒教推進派の藤原仲麻呂、淳仁天皇が対立。
斐麻呂と赤土も別れていく。
藤原仲麻呂に庇護されていた大学寮は廃止となる。

国家に翻弄されながらも、「学ぶとは?」を問い続ける青春の書。
孝謙上皇はエキセントリックに描かれるが、
悪者としての印象が強い藤原仲麻呂も孝謙上皇が寵愛する道鏡も、
この小説ではそうではない。
どちら側に転んでも、
自らが信じるところで義を尽くし、
身を投じていく若者たちが悲しく、眩しい。
脇役の礒部王、山部王(後の桓武天皇)の
意外な活躍も面白いお勧めの歴史小説。
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2020年04月05日

「水底の歌 柿本人麿論」梅原猛

水底の歌―柿本人麿論 (上) (新潮文庫) - 猛, 梅原
水底の歌―柿本人麿論 (上) (新潮文庫) - 猛, 梅原

水底の歌―柿本人麿論 (下) (新潮文庫) - 猛, 梅原
水底の歌―柿本人麿論 (下) (新潮文庫) - 猛, 梅原

とてもスリリングな本でした。
万葉集の歌の解説本でなく、
万葉集の思想を論じた本。
人麿は道真公がそうであったように流罪となり、
水死したという説は中西進氏もその可能性を認めたそう。

「人間は、死すべきもの、不安なもの、という認識が、いつも彼の歌の根底にある。
この深い認識ゆえに、どんなに彼が荘重華美な言葉を使おうが、
彼の歌はけっして浮薄にならないのである。
わたしは彼の中に、人間の根源的な運命をたえず見つめていた哲学的詩人を見るのである」

「彼は偉大なる詩人であったが、
同時にまた、偉大なる悲劇の人でもあった。
詩人としての魂において、彼は菅原道真に匹敵するとともに、
またその悲劇的生涯においても、彼は菅原道真に比すべき人物なのである」

万葉集には悲劇的な死を遂げた皇子たちの歌もあります。
そういった歌を掲載するということは
「皇子たちを死に追いやった権力にたいする、告発の意味をもつ。」

道真公も人麿も死して神となりました。
普通、人は神になれません。
なれたのは彼らが詩人であり、しかも悲劇的な死を遂げたから。
梅原猛の説に納得します。
道真公の先駆者であった人麿、
そして万葉集を編纂した家持。
人麿にも家持にもますます興味が湧いてきます。
万葉集の暗闇にも・・・。
posted by 理乃(ニックネーム) at 15:54| 福岡 ☀| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月30日

かつてあった「四王寺山のお滝場」@四王寺山勉強会

大宰府展示館で『かつてあった「四王寺山のお滝場」』を買ってきました。

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夢中で読みました。
なんて丹念な調査!
その仕事ぶりに敬服!
御笠5丁目の龍頭不動明王院は以前行って、
なんだろうと気になっていたのが解決しました。
国分のおこもり堂は最近見たことがあるという話を聞いたばかりでした。
宇美の極楽寺址には行けそうです。
民間でこんな調査ができるなんて、
太宰府の底力を感じました。
オススメの一冊!
冊子は大宰府展示館で購入可。400円。
閉館中ですが、事務所を尋ねることはできます。
ラベル:四王寺山 お滝場
posted by 理乃(ニックネーム) at 00:22| 福岡 ☁| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月09日

「火定」澤田瞳子

火定 - 澤田 瞳子
火定 - 澤田 瞳子

新型コロナウィルス騒ぎで、
ちまたではカミュの「ペスト」に人気が出ているが、
かつて天平時代に日本でおこったパンデミック天然痘を忘れてはいけない。

直木賞候補となった澤田瞳子の「火定」は天平の天然痘流行を描いた傑作。

天平の天然痘流行では日本の総人口の25〜35パーセントにあたる
100万〜150万人が感染で死亡したとされている。
この物語の登場人物は従来の政権中枢にいた藤原四兄弟などではない。
施薬院で働く医師や役人だ。

当時、痘瘡(もがさ)と呼ばれていた天然痘は高熱が出て、
いったん落ち着く。
しかしそれから全身に膿疱が出て、再び高熱を出し、
内臓にも広がり重篤な呼吸不全によって死に至る。
飛沫感染や接触感染により感染し、7 〜16日の潜伏期間があるというところ、
肺炎で亡くなるという点は新型コロナウィルスと類似点がある。

若き官人蜂田名代(なしろ)は施薬院の仕事に嫌気が差していた。
しかし痘瘡が発生し、
なんとか患者を救おうとする医師、綱手(つなで)や周囲の人々と接するなかで、変わっていく。

作者は名代にしろ、綱手にしろ完璧な人間として描かない。
けれど、身に降り掛かった出来事の中で懸命に生きていくうちに、
自らの弱さや欠点に気付き、その先を切り開いていく。
人はみな弱い。妬み、保身、差別、そんなものにとらわれる。
物語の最後に書かれた言葉が胸に染みる。

「医に携わる者は決して、心強き者である必要はない。
むしろ悩み多く、他を恨み、世を嫉む人間であればこそ、
彼らはこの苦しみ多き世を自らの医術で切り開かんとするのではないか」。

この本を読むことは令和のパンデミックに天平のパンデミックを振り返り、
人間という存在を考えるいい機会かもしれない。

今、医療の現場で奮闘している医療関係者に敬意を表したい。
posted by 理乃(ニックネーム) at 12:58| 福岡 ☀| Comment(0) | ★太宰府関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする