2010年05月14日

故冨永朝堂氏アトリエ

NPO法人「歩かんね太宰府」の主催するコース、
「戒壇院周辺ゆったりアート散策」の2回目です。

戒壇院で座禅を終えて向かったのは
都府楼跡右脇にある故冨永朝堂氏のアトリエです。

冨永朝堂氏(1897-1987)は木彫家。
高村光雲の高弟山崎朝雲に師事。
伝統的な木彫の系譜にありながら、
独自の世界を開拓しました。

ふだんは公開されていないアトリエですが、
このコースのために見せていただけたのです。

さあ、写真アップの許可を得ましたので、
みなさんも冨永朝堂氏の作品をご堪能ください。

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アトリエ「吐月叢(とげつそう)」。

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昭和32年作。「銀河」。
埴輪のように目鼻をくりぬいた女性像。
無駄のないフォルムが美しい。

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鷺。

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作りかけの鷺。

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これは1981年に制作された女神像。
材料となった木は
なんと1300年以上も前の水城の用材。
長く地中に埋もれていた杉に朝堂氏が命を吹き込みました。
触わらせていただいたのですが、
意外に軽く、
そのお顔はとても美しく、おだやかなものでした。

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これはみなさま、よく目にしているのでは?
朝堂氏の遺作ですが、
太宰府天満宮宮司邸の前にあり、
一番頭をなでられているあの御神牛の原型です。

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具象を逸脱したこのような半具象のような作品も好きです。
縄文土器と土偶が結合したようなフォルム。
現代的でありながら、縄文の系譜を感じます。

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エトルリアの古像のような群像。

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奥には石膏の原型がたくさん置かれていました。
これは福岡市美術館に収蔵されている有名な「谷風(こくふう)」の原型。
この作品の流れるように美しい線が好きです。
昭和13年(1938)作。

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中に狛犬の原型を発見。

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1944年作。護国神社の狛犬です。
戦中なのでまさに護国系の形。

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朝堂氏。

戦後すぐ、
朝堂氏のもとに弟子入りした青年がいました。
その人が豊福知徳(とよふくとものり)氏。
のちにミラノに移住する現代彫刻家です。
豊福氏をミラノに取材した経験がありまして、
当時、「吐月叢」の取材ができませんでしたので、
いつかそのルーツを拝見したいと思っていたのです。

その豊福氏の作品も飾られていました。

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今回、朝堂氏の作品を見て、
なぜ心おだやかな感じになるのか考えてみたのですが、
それはアルカイックスマイルにあるのではないでしょうか。
古代ギリシアの彫刻、
そして飛鳥時代の仏像が持つ
不思議な微笑、アルカイックスマイル。
わたしは朝堂氏の作品の向こうに飛鳥を感じます。
時空を超えた美を感じます。
この時空を超えた町、
太宰府にとてもふさわしいと思うのです。

posted by Rino(ニックネーム) at 21:53| 福岡 ☀| Comment(0) | ●冨永朝堂氏アトリエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする