「戒壇院周辺ゆったりアート散策」の2回目です。
戒壇院で座禅を終えて向かったのは
都府楼跡右脇にある故冨永朝堂氏のアトリエです。
冨永朝堂氏(1897-1987)は木彫家。
高村光雲の高弟山崎朝雲に師事。
伝統的な木彫の系譜にありながら、
独自の世界を開拓しました。
ふだんは公開されていないアトリエですが、
このコースのために見せていただけたのです。
さあ、写真アップの許可を得ましたので、
みなさんも冨永朝堂氏の作品をご堪能ください。

アトリエ「吐月叢(とげつそう)」。

昭和32年作。「銀河」。
埴輪のように目鼻をくりぬいた女性像。
無駄のないフォルムが美しい。

鷺。

作りかけの鷺。

これは1981年に制作された女神像。
材料となった木は
なんと1300年以上も前の水城の用材。
長く地中に埋もれていた杉に朝堂氏が命を吹き込みました。
触わらせていただいたのですが、
意外に軽く、
そのお顔はとても美しく、おだやかなものでした。


これはみなさま、よく目にしているのでは?
朝堂氏の遺作ですが、
太宰府天満宮宮司邸の前にあり、
一番頭をなでられているあの御神牛の原型です。

具象を逸脱したこのような半具象のような作品も好きです。
縄文土器と土偶が結合したようなフォルム。
現代的でありながら、縄文の系譜を感じます。

エトルリアの古像のような群像。

奥には石膏の原型がたくさん置かれていました。
これは福岡市美術館に収蔵されている有名な「谷風(こくふう)」の原型。
この作品の流れるように美しい線が好きです。
昭和13年(1938)作。


中に狛犬の原型を発見。


1944年作。護国神社の狛犬です。
戦中なのでまさに護国系の形。

朝堂氏。
戦後すぐ、
朝堂氏のもとに弟子入りした青年がいました。
その人が豊福知徳(とよふくとものり)氏。
のちにミラノに移住する現代彫刻家です。
豊福氏をミラノに取材した経験がありまして、
当時、「吐月叢」の取材ができませんでしたので、
いつかそのルーツを拝見したいと思っていたのです。
その豊福氏の作品も飾られていました。

今回、朝堂氏の作品を見て、
なぜ心おだやかな感じになるのか考えてみたのですが、
それはアルカイックスマイルにあるのではないでしょうか。
古代ギリシアの彫刻、
そして飛鳥時代の仏像が持つ
不思議な微笑、アルカイックスマイル。
わたしは朝堂氏の作品の向こうに飛鳥を感じます。
時空を超えた美を感じます。
この時空を超えた町、
太宰府にとてもふさわしいと思うのです。